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出版トピック 大ブーム「大人の塗り絵」本

中高年の郷愁誘う?

にわかに「塗り絵」の本が売れている。
子供向けのキャラクターものではない。

大人を対象に、名画などを線画にした塗り絵を、見本のカラー図版と
セットにした出版が昨年来、活況を呈している。背景を探った。

部数、出版点数ともうなぎ登り

『大人の塗り絵』シリーズ(河出書房新社)は、昨年4月、フランスで活躍した
植物画家ルドゥーテの絵を原画に使った第1弾「美しい花編」が22万5000部。
「花鳥風月編」「フランスの風景編」などシリーズ5冊の合計で48万部を超える。
このほか夏以降、10社以上が参入している。

売れ筋は花の塗り絵

売れ筋は花の塗り絵。特にルドゥーテは人気で、幾つも出ている。
浮世絵やアール・ヌーボーものも『大人のための美しいぬり絵 浮世絵編』(学習研究社)
『名画の塗絵 アルフォンス・ミュシャ編』(二見書房)など複数見かける。

同じ花でも『ぬり絵花美術館 中島千波』(実業之日本社)や
『熊田千佳慕(ちかぼ)のぬり絵』(英知出版)と多様化してきた。
原画を線画でなく、淡いモノクロにした『夢二のヌリエ』(小学館)
といった新趣向も出始めた。

購買層は40〜70代の女性

興味深いのは、『脳いきいき 大人のぬり絵』シリーズ(竹書房)をはじめ、
脳の活性化に効果的とうたった本が多いこと。近年の“脳を鍛える”ドリル本の
人気とどこかでつながっていそうだ。

『絵手紙ぬりえ帖1』(風塵社)は塗って郵送できる体裁。
愛好者は絵手紙を楽しむ層とも重なっているのだろう。

冒頭に掲げたシリーズの購買層について、河出書房新社の竹下純子さんは
「圧倒的に40〜70代の女性が多い」と話す。

もともと老人介護施設に勤める友人から「レクリエーションとして塗り絵を
使っているのだけれど、大人用があれば」と聞かされ、2003年、
当時在籍していたマール社で『そのまま塗れるスケッチブック なないろ帖』
2巻を手がけた。潜在的な需要は以前からあったのだろう。

04年5月には、インターネット上のショップ「塗絵倶楽部」が塗り絵の頒布
を始め、秋ごろから人気に。紙質は異なるが、昨年、それをもとに書籍化した
『大人がたのしむ塗り絵帖』シリーズ(技術評論社)もお目見えした。

蔦谷喜一の塗り絵

もう一つ、見逃せないのは戦後の少女を魅了した蔦谷(つたや)喜一さんのリバイバル。
1997年の蔦谷喜一・上村久留美著『わたしのきいち』以来、
『THEきいちのぬりえBOOK』などを出版してきた小学館の榎木融理子さんは
「子供のころに楽しんだ、という人たちから大きな反響があった」と振り返る。

昨年はより塗りやすく、高齢者にも向く大判のシリーズを出した。
こうした流れが一気に出版ブームを作り出した、ということらしい。

塗り絵ブームの今後

金子マサ、山本紀久雄著『ぬりえ文化』(小学館スクウェア)によると、
かつての美術教育では児童の創造性を損なうとして、塗り絵が批判されたことがあるという。

裏を返せば広く親しまれていたわけで、そうした世代が中高年となったいま、
塗り絵の楽しさを再発見しているのかもしれない。
実のところ、大半の出版にはノスタルジーの感覚が漂っている。

ものは試しと、記者も自分で塗ってみた。やはり色鉛筆だと色に限りもあるし、
原画の雰囲気を再現するのは正直難しい。とはいえ原画に肉薄する気でなければ、
白い紙に色を塗ること自体はけっこう楽しい。ふと無心になって塗り続けていたりする。
大人の塗り絵は、どうやら新たな趣味の一ジャンルとして、定着しそうな気がする。

元記事
YOMIURI ONLINE (2006年2月1日読売新聞)

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